探偵の愚痴
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最初の探偵事務所
矛盾
訳のわからない
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学んだこと
運営ならず
閉鎖の日
新しい就職先
 新しい就職先

そして、その間、ぼくはつぎの就職先を見つけた。
女子社員が相談電話をして、1件だけ、自分が調査し、料金も明確に答えてくれた探偵事務所がずっと印象に残っていて、休みの日“相談無料”を利用して、事務所を訪問したのだった。

ぼくの事務所より、はるかに狭く、暗い雰囲気だったのだけれど、事務所に相談に訪れる依頼者は少なく、ほとんどが、ファミレスや喫茶店でお茶を飲む雰囲気で話しを聞くそうなので、事務所の必要性がそれほどないのだとか。

調査を依頼するような人は、どこか、うしろめたく、堂々と事務所を訪れるひとはほんの一握りの人しかいなかった、と。
そこへ自分が出入りすることすら、拒んでしまうみたいですね。
ひとつ、勉強になりました。

それまでのいきさつを相談し、でも探偵という夢を捨てられないので、ここで勉強させてほしいと持ちかけると、あっさり、承諾してくれたのだ。
ちょうど、募集をかけようと思っていたところだから、と。

これが、ぼくとあいつの出会いとなったのだけれど、これまたすぐ、後悔することになるのだけれど、このときのぼくは、あいつが神様のように見えたのだから不思議なものだ。
ただ、その調査の仕方や、依頼者への対応の仕方なんかは、ある意味“神”だと、いまでも思うのだけれど。

じつは、あいつ。
あいつに比べると、ぼくの方がたぶん外見的にはいい男だと言える見栄えなのだが、あいつの方がモテルこと、間違いなし。

じつは、奥さんも、かなりの美人。
しかも、あいつはバツイチなのだが、前の奥さんもかなりな美人なので、うらやましい限りだ。
前の探偵事務所より、あいつから学んだノウハウは、かなりなものなのだが、その性格にはかなり問題がある。

いつまで、ぼくはあいつについて行くことができるのか・・・。
ここでも、ぼくの主な仕事はポスティングということに変わりはないのだが、確かに、ぼくの配ったチラシから調査が入ると、達成感はかなりのもの。
たまに入る調査が楽しく、まだまだ辞めるまでの気持ちには至っていない。
いつか、自分の事務所を構えることが出来たら最高なのだが、それもまだまだ先の話しになるのだろう。

悔やまれるのは、前の事務所に置いてきた、3ヶ月分の未払いの給料。
たぶん、一生戻ってはこないのだけれど。
その後の社長は、どこに住んでいるのか。

住所は前のところに置いたままだが、そこにはすでに別の住人が住んでいた。
住所不定の人相手には、裁判も起こせない。
これも、あいつに教えられたことなのだけれど・・・。

それを取り戻すための努力をするより、調査をいくつか取ってくるほうが、かしこいぞ、というあいつの言葉は、悔しいけれど、ぼくに励みになった。
ちなみに、あいつのやり方としては、チラシで調査が入った場合、その調査料金の5%がぼくに入ってくる約束なので、ポスティングにも力が入るというものだ。

腹の立つあいつのもとだが、そのやり方は筋の通ったものだし、なにより探偵としての腕が一流だと思うので、まだしばらく、ここで勉強していようと思う。




 
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