探偵の愚痴
HOME
最初の探偵事務所
矛盾
訳のわからない
学校
学んだこと
運営ならず
閉鎖の日
新しい就職先
 事務所閉鎖の日

主婦向けの探偵講座がそれなりに問い合わせのあるなか、じつは社長、借金で首が回らなくなってきていたらしいのだ。
知り合いにもお金を借りていたようで、ちょくちょく事務所にも人が訪れるようになり、社長は雲隠れしてしまう日も少なくなくなってきた。

じつは、お給料は振込ではなく、手渡しだったため、気になっていたのだ。
社長が来なければ、お給料がもらえない。
次に、岐阜にスナックを経営する話しが出ていて、そっちに行くことが多く、おまけに、スナックを経営するための場所を提供してくれている人に、預かり金を渡していることで、今回のお給料は待ってほしい、と言われたのだ。
その預かり金は百万単位であるため、それが返ってきたら、みんなまとめて返せるから、と。

女子社員の一人は、怒ってすぐに辞めてしまった。
必ず、来月にお給料を取りに来る、という捨て台詞を残して。
ぼくもそんな風にかっこよく立ち去ってしまいたかったが、やっと念願の名古屋に出てきて、結局探偵という仕事に失敗しました、と地元に帰るのも嫌で、ちょっと様子を見ることにした。

もしかして、探偵学校に行ったり、独立することがあるかも?
という期待を込め、なけなしのお金を毎月貯めていたので、それを少しずつ切り崩しながら。

ぼくの探偵講座で入るお金は、事務所の光熱費や運営費なんかに当てられ、給料ほどの金額は残らない。
お給料未払いも2回目となると、もう危機を感じる。
そして、3回目は我慢の限界がくる。

現実問題、生活していけないのだから。
2回目の未払いのとき、次も払ってもらえないなら、ぼくはやめます、と宣言していたので、主婦講座も、それ以降にならないように予定を組んでいた。
ぼくがそれを辞めてしまうと、事務所の収入源もなくなる。
女子社員も、ぼくがやめるなら、自分たちも辞めます、ということになった。

社長は、それまでにスナックをオープンし、預かり金を返してもらうので、待っていてくれ、ということだったのだけれど、結果的には3回目も給料未払いとなってしまったのだ。
というか、あとから女子社員から聞いた話しなのだが、このスナック、結局オープンできないまま、お金を騙しとられたようだ。
どこまで、人の良い社長なんだか。

先払いしていたという家賃も、あと1ヶ月を残すだけだし、たぶん、この家賃を社長が払えるとは思えない。

ぼくは、これ以上自分の貯金を減らすこともできないので、ようやく辞める決心もついたのだ。




 
Copyright(C) 探偵の愚痴